PERMINUTEと時間①

PERMINUTEと時間①

「パーミニッツ」とか「パーミニュート」とか呼ばれて早3年、ひょんなことからじわりとECサイトをオープンさせることになりました「パーミニット」です。

今回は初めての記事なので、2019AWと2020AWの2つのコレクションについていくつかのリファレンス群を2回にわたりご紹介しようと思います。

2019-20AW “YESES”

時代とともに漢字がカタカナに、そしてひらがなに変わっていく中で変体仮名の存在に着目したのがスタート地点です。

ふと道を歩いているときに何気無く目にした蕎麦屋さんの暖簾がグニャグニャの文字で書かれていて読めず、そのことがなんとなく気になって調べ始めたのを覚えています。

変体仮名は明治三十三年の小学校令施行規則で採用されたひらがなと異なる仮名として知られています。紀元800年ごろから認められるなどその歴史は長く、異体仮名や大和仮名として紫式部や紀貫之の書物にも登場してきました。

また、現行のひらがなのように一音一字ではないという特徴を持っていたことが大きなポイントでした。例えば、現行の「あ」のルーツは「安」という漢字を崩したものですが、この「あ」とは別に「阿」をルーツにもつ仮名も存在していたのです。ややこしい・・・。

そしてさらにややこしいのが、今挙げたケースの他に字母は同じでも崩し方が異なるものもあるということです。「安」から派生した「あ」自体にも数種類あったとも言えるでしょう。

しかも著者や時代によって扱い方が異なるほかに、ひとつの文章のなかで混用されることもあり、特に平安時代末期の装飾写本西本願寺三十六人家集のように美的効果が重視された作品では、単調さを嫌うかのように多くの字体が用いられたそうです。(Wikipediaより)

今よりもずっと社会が分断されていたかつての日本で、局地的に進化した訛りや方言と同じように文字も変遷してきたことにとても驚き、ヒトを介在しながらまるで生き物かのようにその実態は常に移ろい形を変えていく様子がとても美しい感じられました。それと同時に、明治以降の教育面をはじめとした画一化の流れの中で徐々に立ち位置を失っていく変体仮名に思いを馳せたり・・・は別にしませんでしたが、この一連の過程はコレクション作りにも参考になるポイントがあるのではないかと思うようになっていきました。

コレクションを作り始める時、だいたいいつもそうなのですがいきなり洋服を描いたりすることはほとんどありません。今回も最初のスタディとして取り組んだのは新しい文字を作ってみることでした。

とはいえ1から文字を作ってもただの記号の集合になってしまうと思い、アルファベットをベースに発音が変わるようなイメージで形を変えてもらうことにしました。

そうして文字を格闘していくうちに、変体仮名が今でも使われていたら?という妄想をするようになっていきました。

来なかった未来というのはいつもロマンに満ちているものです。

昔クリスマスプレゼントでもらった恐竜図鑑の1ページに、恐竜が絶滅しなかったら?という特集があったのをなんとなく思い出し、コレクションへの視点をより多面的にするべくリサーチしてみることにしました。

図鑑に立ち返り詳しく見てみると、脳の大きい恐竜がやがて人間のように発達した文明を持つのではないか、という考察とともに恐竜人間の模型(トロオドンという恐竜をベースにして作ったディノサウロイドという恐竜人間で、その後この学説によるモデルはあまりに擬人的すぎるとして信ぴょう性の低いものと評価されています)の写真が印刷されていました。

この学説が盛んに議論されたのが1980年ごろ。Dale Russellという古生物学者によって説かれています。彼は昨年末に亡くなったそうです、R.I.P・・・。

この時代、ポストヒューマニズムが勃興し、「人間の、あるいはそれに代わるものの次なる姿」について議論するムーブメントが存在していました。PCの一般化や遺伝子操作技術の向上に大きく影響を受けたものでした。

そんな中、僕が(再)注目したのは生物進化について独自のアプローチを展開していたDougal Dixonという学者でした。

彼の本を初めて読んだのは11歳くらいの時だったように記憶しています。

いつも遊んでくれていた近所の2つ上の友達に見せてもらったのが『the FUTURE is WILD』でした。

人間が滅亡後の生物世界を当時の科学と想像力を頼りに描き出した名作です。

ちなみに『AFTER MAN』も併せて是非読んでいただきたい作品です。

『MAN AFTER MAN』より

この『the FUTURE is WILD』は、未来の地球での変化が未来になればなるほど生き物の形が現在とはかけ離れていくさまが魅力的でよく読んでいました。

そもそも500万年後の世界から話がスタートするので少年の想像の範疇を超えています。

ちなみに2億年後、陸上の脊椎動物に代わり、ゾウの数倍の大きさのイカの祖先が生態系のトップに君臨し、おでこの緑のぶよぶよを振動させてコミュニケーションをとる様子は相当ショッキングなものでした。

この一連のリサーチを経て、ものの移り変わりやあらゆるのもののシーケンス、さらにそこに生まれるリズムを指でなぞるようにして、直接的ではないにせよ洋服に染み込ませていくのが面白いと思い、作ったのがこのコレクションでした。

次回は2020SSについて書いて行こうと思います。

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